2021.11.18
熊本に工場建設!半導体受託製造における世界最大手「台湾TSMC」とは?
こんにちは。リージョナルキャリア熊本のコンサルタント、田尻です。
今回は最近、熊本で何かと話題の半導体受託製造で世界最大手、台湾のTSMCについてです。
台湾では「台灣積體電路製造股份有限公司」、英語では「Taiwan Semiconductor Manufacturing Company Limited」と表記されます。日本においては「TSMC」、もしくは「台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング」とも呼ばれています。
そのTSMCは2022年、熊本県内に日本初となる製造工場の建設に着工し、2024年末までの生産開始を目指しているようです。どのような会社なのか、また熊本県に及ぼす影響など、詳しく見ていきましょう。
台湾TSMCとは?
半導体業界にいる方であればご存知だと思いますが、あらためてTSMC社をご紹介します。
|特徴
TSMCは世界最大の半導体ファウンドリー(半導体デバイスを生産する工場)で、半導体開発や設計をおこなっているメーカーから製造を受託することに特化している企業です。Appleを主要顧客としてiPhoneやiPadに搭載されているチップはすべてTSMCで生産されています。
ここで疑問。なぜメーカーは、自社で半導体のチップを製造しないのでしょうか?それは、半導体製造の研究開発のために、大規模な研究や設備投資が必要となるからです。
ほとんどの企業では開発・設計に特化して、製造は他社へ委託しており、高性能な機器に搭載する半導体はファウンドリー(委託による生産を専門とする製造業)であるTSMCに依存するような形になっているのです。
また、現存する最高の半導体であると評価されている5nm(※)の半導体を安定的に製造できるのは世界でもTSMCのみとなっています。
今年の7月には、2nmプロセスによる半導体製造工場を台湾に新設することも発表。2024~25年頃には2nmの半導体へと移行することが期待されている状況です。
(※)nm(ナノメートル):半導体回路の線幅の単位。ナノは10億分の1を表す。線幅が細くなるほどチップサイズは小さくなり消費電力は減少、処理速度も速くなり性能が高い半導体となる。
|マーケットシェア
2021年8月に、TrendForceが公表した、2021年第2四半期、世界のファウンドリ企業売上高ランキングは以下のとおりです。
順位 | 企業名 | 売上高(100万ドル) | マーケットシェア |
---|---|---|---|
1 | TSMC(台湾) | 13,300 | 52.9% |
2 | サムスン(韓国) | 4,334 | 17.3% |
3 | UMC(台湾) | 1,819 | 7.2% |
4 | Global Foundries(アメリカ) | 1,522 | 6.1% |
5 | SMIC(中国) | 1,344 | 5.3% |
6 | HUAHONG GROUP(中国) | 658 | 2.6% |
7 | PSMC(台湾) | 459 | 1.8% |
8 | VIS(台湾) | 363 | 1.4% |
9 | Tower(イスラエル) | 362 | 1.4% |
10 | DB HiTek(韓国) | 245 | 1.0% |
(※参照:TrendForce/2021年8月31日"Ranking of Global Top 10 Foundries by Revenue,2021")
TrendForceのレポートによると、TSMCは台湾工場で発生した停電等の影響により、前四半期と比較すると収益が伸び悩み市場シェアも減少したようですが、それでも52.9%と、他を圧倒するシェアを誇ります。
|時価総額
TSMCの創業は台湾ですが、その時価総額は日本円にして60兆円を超えています。
半導体企業としてはインテルやサムスンといった大手を上回り世界最大、また時価総額ではトヨタのほぼ倍となっています。全業種の時価総額で比較しても、世界のトップ10の地位を固めつつある企業です。
熊本県への工場建設について
ではなぜ、世界トップレベルの企業が熊本への工場建設を決めたのでしょうか?その大きな理由は、以下の2点だと言われています。
①世界トップクラスの製造装置メーカーである東京エレクトロン九州やソニーグループなど、関連企業が集積している
②半導体生産に欠かせない水資源が豊富であり、交通アクセスが良い
熊本には阿蘇地方に降った雨が地下水として豊富に湧出していますし、工場建設が予定されている菊陽町は高速道路のインターチェンジや空港にも近いので、アクセスも便利ですよね。
熊本空港は現在大規模改修もされています。2017年には「熊本県・熊本市・高雄市友好交流協定」も締結されており、熊本と台湾の友好関係も要因の一つにあったとも聞いています。
また、今回の工場の建設にはソニーグループも約570億円を出資しています。また国からの支援策として、投資額うち約半分の4,000億円程度を出資するという発表も。これに合わせ、熊本県もインフラ整備を進める方針を打ち出しています。
菊陽町は自然が豊かで子育ての環境にも適しており、大型のショッピングモールなども近隣に増えている住みやすい街ですが、さらに人気が高まるかもしれませんね。
▼TSMCの建設予定地(Googleマップより)
熊本県内に考えられる影響は?
TSMCの建設により考えられるメリットは、雇用機会の増加、熊本県内の人口増加などが考えられます。
先日、1,500名規模での新規雇用を見込むと発表されました。それだけ熊本に人が増えると住宅需要も高まり、消費も増えることが期待されます。
一方で地元企業からは、人手不足や雇用確保を心配する声も上がっています。地元企業への雇用安定の懸念はありますが、熊本へのU・Iターンを希望されるエンジニアが増え、熊本から九州全域の地域活性につながることを願いたいですね。
また、一番気になる求人ですが、現時点では情報はまったく出ておりません(※追記あり)。先日、ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング社とのお打ち合わせもありましたが、まだすべて未定ということでした。
今後もTSMCに関する情報はタイムリーに発信させていただきますが、ご興味のある方はぜひ一度お気軽にご相談ください。新たに求人情報が出てきた際に、いち早くお届けすることができるかと思います。
現在、熊本では半導体企業を中心として積極的に採用活動が進められています。TSMC社同様に県内誘致企業の求人も多数ありますので、ぜひチェックしてみてください。
(※追記)現在は多くの求人がご覧いただるようになりました。TSMC熊本工場である「JASM(Japan Advanced Semiconductor Manufacturing)」の求人はこちらから。
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