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半導体、医療、エネルギー。熊本発の成長エンジンを育てる投資ビークル。
肥銀キャピタル株式会社
代表取締役社長 田島 功
1962年東京都出身。東京大学卒業後、富士銀行(現:みずほ銀行)に入行。グローバルトレードファイナンス営業部長などを歴任し、2012年5月に肥後銀行へ入行。取締役常務執行役員市場営業部門長、取締役専務執行役員経営監理部門長を経て、2025年 肥銀キャピタル株式会社代表取締役社長に就任。現在に至る。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。
地域の価値を投資で掘り起こす、肥銀キャピタルの使命とは。

弊社は熊本を中心に地域の未来を投資で支える存在として、1996年に肥銀ベンチャーキャピタルとして設立されました。
2008年には現在の肥銀キャピタルへ社名変更し、肥後銀行グループの一員として活動しています。
私たちの事業は、ファンドの組成と運用を柱に資本政策や経営コンサルティングなど、企業の成長支援を幅広く手がけています。
現在運用しているファンドは、「肥銀ベンチャーファンド2号」や「肥銀地域共創ファンド」、「肥銀ブリッジファンド」など合計12本、総額412億円にのぼります。
私たちの根底にあるのは、肥後銀行の掲げる「地域の未来を創造する」というパーパス。それを実現するために地元に眠る優良企業や技術を見つけ出して世に送り出すこと、さらには外部から良質な企業や人材を地域に呼び込むことが私たちの重要な使命です。
私自身、東京や海外での長年の経験を経てこの地に来ましたが、地域経済と向き合う中で可能性がまだまだ広がっていると実感しています。
資金だけではなく、ネットワークやノウハウを提供することで熊本発の未来を形づくっていく。それが肥銀キャピタルの役割だと考えています。
ブリッジファンドによる事業承継と企業価値向上に取り組む。
肥銀キャピタルのもう一つの重要な取り組みが「事業承継」です。これは、地域社会の未来を支えるうえで避けて通れないテーマです。
特に地方では、技術も実績もある優良企業が後継者不在によって将来的に事業継続が懸念される場合もあります。私たちは、そうした企業に対し「肥銀ブリッジファンド」を通じて支援を行っています。
このファンドは、従来のM&Aの枠にとどまらない役割を果たします。事業の価値を可視化し、必要に応じて経営改善支援を行って次の担い手にバトンを渡す。企業の「未来」を見据えた支援を行うことが目的です。
実際、投資を通じてバリューアップされた企業が地域に根を下ろし、地元の雇用や経済を支える存在となっている例も増えてきました。
また、私たちは単なる資金提供者としての投資家ではなく、企業に深く関与する伴走型の支援者です。関与することで企業の内部に入り込み、時には経営陣と膝を突き合わせて議論することもあります。
これは金融の知識や数字だけでなく、企業の本質を見抜く目と、それを伝える力が問われる仕事です。
「未来に向けた橋を架ける」その想いで、事業承継という課題に真剣に取り組み、地域企業の次のステージへの道筋をつくっていきたいと考えています。
熊本をはじめとした地域が次世代へ確かな価値を残していくために、私たちができることはまだまだあると感じています。
半導体や医療など、熊本の強みを活かして未来産業を育てる。

今後の事業展開の中心は、「半導体」「医療」「エネルギー」という熊本の特性を活かした成長分野への注力です。
TSMCの進出により熊本は半導体産業の一大拠点として注目されましたが、実際に地元企業が一次サプライヤーとして関わるには、技術力や信頼性の面でまだ壁があります。
私たちは地元の技術力ある企業を発掘し、必要なネットワークや人材とつなげていくことで熊本発のサプライヤーを育てていくことが重要だと考えています。
また、医療分野では、熊本大学の研究力を活かしたベンチャー創出が進んでおり、世界に羽ばたく企業が出てきています。
中でも「StapleBio」は、独自の人工核酸技術で新しい創薬の可能性を拓く企業として期待しています。こうした企業が熊本から出てくる環境が整ってきたのは非常に心強いことです。
エネルギー分野では、再生可能エネルギーやデータセンター関連のインフラ投資に注目しています。電力需要が高まる中、熊本でもそれに応える仕組みが必要で、これからの社会変化に対応するための重要なテーマです。
産業別のポートフォリオ管理といった投資の「見える化」も進めており、お客さまに「ここに預けて安心だ」と感じていただける体制を整備していきます。
私たちは地域の未来を共に創るパートナーとして、次のステージへ進もうとしています。
技術と市場、人材と企業、地域と世界、そして過去と未来をつなぐ。
肥銀キャピタルの本質的な役割は「つなぐこと」です。これは資金提供だけにとどまりません。技術と市場、人材と企業、地域と世界、そして過去と未来をつなぐことが私たちの仕事の核心にあります。
どんなに優れた技術や企業も単独では限界があります。だからこそ、我々が持つネットワークを活かし、必要なパートナーや情報をつなぎ、事業の可能性を最大限に引き出していきます。
また、私たちが大切にしているのは短期的な成果にとらわれない視点です。
投資の成果はすぐには見えないこともあります。だからこそ、「ネットアセットバリュー(NAV)」という資産価値の推移を重視し、長期的な視点で企業と共に歩んでいくことを意識しています。
資金提供だけでなくネットワークを活かし、地域の成長を後押しする。

現在、肥銀キャピタルの社員は16名体制で、その多くが肥後銀行からの出向者です。ただ、今後は外部からの専門人材を積極的に採用していく方針です。
というのも、ベンチャー投資や事業承継といった私たちの業務には、金融の知識だけでなく、非常に高い専門性が求められるからです。
半導体分野なら、装置や製造工程、材料の知識。医療分野なら、疾患ごとの特徴や治療法に関する深い理解が必要です。そうした知見をもとに、投資対象の企業を多面的に評価する力がなければ、良い判断はできません。
優れた人材が集まれば、それだけ高度な議論ができるようになり、判断の質も高まります。これは、熊本という地域にとっても非常に価値のあることです。
また、肥後銀行では「プロフェッショナル職」というジョブ型制度を導入し、専門性を高めながら長く活躍できるキャリアパスを整備しています。
資格取得や大学院への通学などの可能性もあり、個々の成長を後押しする制度が充実しています。肥銀キャピタルでも同様に、専門家として腰を据えて成長していける環境を整えていきます。
最終的には、「インベストメント・ディシジョン」、つまり最終投資判断を自ら担える人材を育てていきたいと考えています。
非常に責任ある仕事ですが、知見とネットワークを武器に道を切り拓いていく最高に面白い仕事です。知識と覚悟を持った人材との出会いを楽しみにしています。