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「食」×「観光資産」=「旅」で熊本を世界にマーケティングする。

株式会社くまもとDMC
代表取締役社長 磯田 惇

更新日:2021年9月15日

1983年熊本大学法文学部法科卒業後、株式会社日本リクルートセンター(現:株式会社リクルート)入社。1987年、熊本県庁入庁。商工観光労働部国際課長、同部政策審議監兼商工政策課長、知事公室政策審議監兼くまモングループ課長などを経て、2018年熊本県商工観光労働部長。20年、株式会社肥後銀行地域振興部理事、21年4月現職へ。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

地域の「稼ぐ力」を引き出し、地域活性化を下支えする。

株式会社くまもとDMCは、熊本の強みである食・観光をブランディングして地域を活性化する目的で、肥後銀行と熊本県の出資により2016年に設立されました。人口減少、少子高齢化が進む中、日本の「地方創生」において、経済波及効果の高い観光の役割は大きいと考えています。熊本県全域を対象とする地域連携DMOとして、圧倒的なマーケティング力による戦略立案、熊本県のブランディングを行い、観光地経営の視点に立った観光地域づくりに努めています。

観光地域としての魅力を高めるために様々な組織が一体となり、マーケティング・マネジメントやブランディング、商品造成、プロモーションなどを行い、観光客を誘致することで、地域経済の活性化を図ることが事業の目的です。

これまでは各分野や産業が個別に行ってきた観光振興を、当社が一元的に担うことで、インバウンドを含む観光客を誘致し、交流人口を増やして地域の「稼ぐ力」を引き出す。それが地域の活性化につながり、ひいては地域を訪れた観光客の定住を促進していくことも重要な役割となります。

熊本県の旅行消費額は3,220億円(2019年)で、観光は熊本県の重要な産業となっています。半導体・自動車が熊本県の主要な産業ですが観光は裾野が広く、少子高齢化・過疎化が進む中で地域全体にお金がいきわたる方策となります。

そして阿蘇・天草・熊本城など著名な観光地だけでなく、地元の方々が当たり前と思っていた地域の何気ない伝統・文化・歴史が観光コンテンツとなる時代がやってきました。それを商品として磨き上げていくことで、地域にお金が回る仕組みができると考えています。

観光産業のピンチをチャンスに変えるために。

観光は団体から個人へ、モノ消費からコト消費へ変化してきています。また、ニューノーマルやDXなどの時代の変化に対応できるよう観光にもイノベーションが必要となっています。コロナ禍により、観光産業は大きな打撃を受けていますが、ピンチをチャンスに変えていけるよう、お役に立てる仕事をするのが、今くまもとDMCが1番やりたいことだと思っています。

プライベートツアーサービスを運営しているotomo株式会社(東京都)と、熊本県旅行業協同組合、くまもとDMCの三者連携協定を締結し、熊本における地域ブランドのガイドサービスを2021年4月からスタートし、ツアーコンテンツの開発やガイド人材の育成、サービス運営基盤の整備に共同で取り組みます。

熊本には、自然や食、文化など多様な観光資源が豊富に存在しており、地域在住のガイドが熊本の魅力を多面的に伝えることで、旅行者の感動が深まり、旅の価値が飛躍的に向上すると考えています。特に、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行により、安心・安全を前提とした新たな旅行スタイルが求められている中、三密を避けながら安全に楽しめるガイドサービスのニーズが高まっています。

また、熊本は海外からのクルーズ船が数多く寄港するとともに、香港、台湾、韓国からの海外直行便も就航しており、アフターコロナに向けた訪日外国人旅行者の受け入れ態勢の強化も求められています。熊本のブランド力・観光資源・人材を活かしたプライベートツアーサービスを、サービスの運営基盤やノウハウを有するotomoおよび、幅広い地域ネットワークを有するくまもとDMC、熊本県旅行業協同組合が共同で運営することで、観光振興を通じた地域の活性化を目指していきます。

地域に根差し、地域の資源を使って経済を活性化。

今、一番意識しているところは「観光地域づくり」というパブリックな役割をしっかり果たしながら、事業会社としても成立させることです。地域の方々の期待に応えていくためには、まず地域の課題解決にしっかり取り組むことが必要だと考えています。

短期的には持ち出しも多いと思いますが、地域の方々とともにしっかり取り組み、地域の課題解決に道筋をつけ信頼感を得ていく中でビジネスも生まれてくると思っています。

地域に利益が生まれない限り、自分たちの収益には繋がらないということを忘れてはいけないと社員にも伝えています。社員には地域の課題解決に積極果敢に取り組み、地域の隅々にお金が回っていく仕組みをつくり出して、地域を元気にしていくことに大いにチャレンジしてほしいと考えています。

地元経営者とのネットワークで判断力を磨く。

県内の様々な経営者の方々とのネットワークの構築を強く意識しています。理由は2つ、1つ目は「コト消費」が進む中、観光事業者の方々のみならず、多様な方々との連携がとても重要になっています。社員が現場で「こんなのができたらいいね」といった時に、「○○の社長に連絡してみようか?」と電話一本で解決できることもありますよね。そんな人間関係を構築しておくのも経営者の役割だと考えています。

もう1つは経営者としての判断基準を養うことです。現場の情報はメンバーの方が一番持っていますよね。経営者も同じ情報しか持っていなければ存在する意味がありません。違った角度からジャッジができるに足る情報を持っていなければ、社員も経営陣に相談する意味を感じませんよね。ですから違う情報を持つ経営者の方々との人脈づくりは大切と考え、時間を割いています。

社員の意見やアイデアを引き出し、社員の幸福量の増やす。

経営者として一番意識しているのは、会社の雰囲気・組織風土をどうつくるか、です。当社のような企画会社の財産は「人」しかありません。社員がいかにいきいきと働けるかが重要だと思うんですね。

社員には、仕事を通して自己実現してほしいと考えています。大切なのは仕事を通していかにお客様に喜ばれるかであり、喜んでもらえることが社員ひとりひとりのモチベーションに繋がると思います。

くまもとDMCは、現場に1番近いところでニーズを掘り起こし、これをやったらお客様、もっと言えば地域に喜ばれる仕事ができる会社です。不可能と思うことでもいかにして実現していくか、チャレンジする中で地域、ひいては会社にも貢献できる。そういった一人一人の考えをいかに実現できるかをサポートするのが社長の役割だと思います。

打ち合わせの時なども、極力、自分の考えは先に言わずに、とにかくしゃべってもらうようにしています。時間はかかりますが、積極的に聞くことで現場の情報をしっかりつかめます。

自分にとって都合のいい情報しか耳に届かなくなれば判断を間違え、いざというときに大きなミスジャッジをしてしまう可能性があります。強すぎる上司は、組織、会社をダメにしてしまうことが多いと思います。私は現場感覚を大事にしていきたいと考えています。

マネジメントも同様ですね。答えが自分なりにあってもすぐに表に出さないようにしています。対話しながら社員自身で結果に辿りついてほしいと思っています。納得しないと人は動かない。自分自身で気づけた方が仕事に対するモチベーションが上がり、達成感に繋がりますよね。社員一人一人が達成感を持ってやれるというのが社長の幸せであり、会社の幸せだと思います。

くまモン的にいうと、社員の幸せの総量をどれだけ膨らませることができるかが大事だと思うんですよね。一人一人の社員の幸福量が膨らめば私も幸せになれます(笑)。

編集後記

チーフコンサルタント
田尻 由美子

インタビューを通じて磯田社長の「地域の自立と生活の豊かさと目指して、地域とともに本質的な地域活性を進める」という想いを強く感じました。

熊本は地震や水害などこれまで多くの被害を受けていますが、豊富な観光資源が多くある地域です。これから、同社の取り組みによって、新しい価値の発掘、新しい観光地域づくりが進められることを非常に楽しみにしています。

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