塩分の吸収をコントロールする技術で世界の健康市場に挑む。
トイメディカル株式会社
代表取締役社長 竹下 英徳
兵庫県立大学を卒業後、外資系製薬メーカーに入社。1998年に熊本へUターンし、リバテープ製薬株式会社で商品開発に従事。2013年にトイメディカル株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。
「困っている人」を「笑顔に」する製品を創造していく。
当社の事業は大きく二つあります。オリジナル医療商品の開発を行う「医療機器事業」と健康食品の開発を行う「健康食品事業」です。
中でも、健康食品事業のカギとなる「塩分の吸収をコントロールする」技術は、国内・海外の大手企業からお問い合わせやオファーをいただいています。世界的なニーズが見込まれる健康食品事業に注力すべく、研究開発施設・食品製造レベルの工場を併設した新社屋を建設して2023年10月に移転も果たしました。
社名の「トイメディカル」は、「To make you smile」という企業理念のもと、子どもを笑顔にするおもちゃのような製品を創り続けていきたいという想いから名付けました。当社の製品開発は、すべて誰かの「困った」から始まります。
「ほんとうに困っている人の役に立つ」をベースに、これまで世の中になかった製品を生み出すことで、使う人のQOL(生活の質)を向上させることが当社の使命だと考えています。
日本そして世界からも注目される「塩分の吸収をコントロールする」技術。
もともと医療用品メーカーである当社は、透析患者向けの「剥がす際に痛みが少ないテープ」などを主力製品として販売していました。次期製品のモニタリングの際に、透析患者の方から「食事制限が苦痛。また昔のように熊本ラーメンを食べられるような商品を作ってほしい」という相談を受けたのが商品開発のきっかけです。
正直、畑違いの商品で開発の方向性も見えていませんでしたが、患者さまの困り事を解決するのが私たちの企業理念です。失敗のリスクは覚悟で開発をスタートしました。
商品開発の方向性が見えない中、脂肪や糖の吸収を抑制する製品のCMを見て「塩分の吸収も抑えられるのではないか」とひらめき、親交のあった熊本大学の教授と共同研究を開始。塩分吸着機能を持つ海藻に着目し、海藻から抽出した塩分吸着ファイバー(アルギン酸類)により、塩分を体外へ排出する技術を確立しました。
こうして2018年2月、塩分吸着サプリメント「デルソル」の発売を開始。2019年3月「ナトリウム排出を目的とした食品組成物」としての特許を取得。令和元年度の熊本県工業大賞特別賞(健康福祉賞)もいただきました。
その後も「塩分の吸収をコントロールする」技術の研究開発を進めながら機能を高め、健康補助食品「デルソル」、機能性表示食品「GABAデルソル」をリリース。2024年4月には塩味調味料「零(しお)」を発売しました。
「塩分は気になるけど食事の味はできるだけ変えたくない」方をターゲットとした、従来の減塩塩とは異なるメカニズムを持った調味料で、自社ECサイトのほか熊本県内のスーパーでも販売しています。同様の商品が世の中にないため、今後の成長が楽しみです。
大手企業とのコラボで認知度・信頼度をあげながら、世界市場に挑戦。
「塩分の吸収をコントロールする」商品は、日本だけでなく世界を探しても競合がありません。それだけ優位性を持つ自信のある商品ですし、それを裏付けるエビデンスも取れています。
塩分を気にせずに好きなものを食べられる「塩分の吸収をコントロールする」技術は、医療や健康に関わる業界はもちろん、外食やファストフード業界、菓子メーカー、冷凍食品・ハム・ソーセージなどの加工品といった食品メーカーからも注目される技術です。
国内・海外で展示会に参加し、PR活動に力を入れているところですが、すでに国内の大手企業・メーカーのほか、世界的に事業を展開する海外企業からもお問い合わせをいただくなど、大きな手ごたえを感じています。
今年9月には、熊本県の「2024年度UXプロジェクト実証実験サポート事業」の実施事業者に採択され、ソフトバンク株式会社、株式会社ユーリアと当社の連携により「熊本県における高齢出産女性の栄養状態のモニタリングと吸収されない塩が及ぼすQOLの改善についての取り組み」の実証実験が12月より開始します。
塩分摂取の抑制ももちろんですが、食べたいものを我慢しなければならない妊婦さんのストレス緩和にもつながることでしょう。このように、大手企業との提携を増やしながら、医学的に有用なデータを構築し、アピールすることで認知度をあげていきたいと考えています。
また「塩分の吸収をコントロールする」技術や商品について、当社独自のアピールだけでなく、公正に厳しく管理していくことを目的に、第三者機関として「一般社団法人おいしく適塩推進協会」も発足しました。
「塩分を気にせず食べられる食品をつくる」ことに共感いただいたメーカー・大学教授・研究機関などが研究や分析を行い、エビデンスを取っていきます。正確な情報を世の中に発信するとともに「この協会が認定した商品なら安心」という信頼の証になればと、この取り組みを開始しました。
資本提携や支援プロジェクト参加でスピードを上げ、チャンスを広げる。
ベンチャーとして立ち上げた当社は、技術力の向上・商品開発とその展開をスピーディーに、ダイナミックに推し進めたいとの想いから、大手企業との資本提携、行政や専門機関による補助金の活用・支援プロジェクトに積極的にチャレンジしてきました。
2018年7月にはロート製薬株式会社、株式会社リバネスと資本提携。21年1月にはヤマエ久野株式会社とも資本提携しました。当社の技術力とヤマエ久野の顧客基盤・販売網を組み合わせることにより、食品関連事業者に対して新たな付加価値を提供できると判断したからです。
直近では、2022年3月にスタートアップ企業の育成支援プログラム「J-Startup KYUSHU」に選定され、23年6月には成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)、7月には熊本県地域未来投資促進事業補助金など多くの事業に採択されました。
2024年2月より「零(しお)プロジェクト」としてクラウドファンディングを開始。4月からは熊本大学に共同研究講座も開設しました。これらの取り組みは開発のみならず、当社の技術・商品の認知度・信頼度を上げ、ブランドの後押しにもつながっています。
熊本県や熊本市は創業に対しての支援が手厚く、サポートや補助金は大変助かりました。大学も共同研究に積極的なので、産官学の連携によりスムーズに開発を進められました。
ただ、熊本県には上場企業が9社しかなく、ベンチャー経営者の仲間たちと「寂しいよね」と話しています。その中でさらなる飛躍をしていくため、当社は上場も目指しています。熊本からIPOに挑戦するベンチャー企業が続々と生まれる土壌を私たち若手経営者がつくり、牽引していきたいと考えています。
食品の中に当社の商品が当たり前に採用される世界を共に創る。
現在、社員は16名になりましたが、さらなる成長・拡大を見据えると人材はまだまだ必要です。世の中に無いものを商品化していくので、課題解決力が一番に求められます。
具体的には、開発部門で歓迎しているのは理学・化学・生物・薬学の知識がある方。営業は新規開拓というより私が開拓したお客さまを受け渡し、社内外でコミュニケーションを取りながら課題解決に向けて進めていくのが基本の流れになるため、文系でも問題ありません。現在、国内だけでなく海外の企業からのお問い合わせも増えているので、外国語ができる方も大歓迎です。
少数精鋭ながら、事業も会社も成長しているので、幹部社員も育てていきたいです。私が示す方針をもとに事業を管理し、社内でオペレーションを回していける、そんな方もお待ちしています。
「本当に困っている人」を「笑顔に」する製品を創造していく。「日本の食品の中に、当社の商品が当たり前にある世の中へ」。この想いや理念に共感し、挑戦してくれる仲間を増やしていきたいです。